梅雨と蛍の連想
[2020.06.11]
梅雨を迎えるこの時期は、蛍の季節でもあります。蛍と聞いて、何を連想しますか。私は、たとえば、俳人池田澄子さんの代表句「じゃんけんで負けて蛍に生まれたの」を思い浮かべます。
この句は、口語体で綴られています。それにより、煌々とした輝きとは対照的な蛍の光のはかなさが、より身近なものとして感じられ、私たちの胸をうちます。蛍がその生涯で光を放つのは、1,2週間だけなのだそうです。初夏の薄暗がりを静かに照らし、そっとその短い生を終えるのです。
私たちの一生は、もしかしたら、じゃんけんの勝ち負けのように、偶然の結果としてあるだけなのかもしれません。それが、人であっても、蛍であっても。ただ、負けて選別された蛍の生は、決して価値のないものなどではありません。蛍の光が照らす先に、私たちは、遠い過去や未来に連なる生命の輝きを想像することができます。また、いまを生きることのよろこびや悲しみに思いを馳せることができます。
そんな蛍を観賞できる名所や穴場が、自然豊かな県内には多数あります。しかし、今年は、新型コロナ禍の影響で、蛍祭りなどのイベント企画が中止となったところも多いと聞き、残念な気がします。一方、蛍からすれば、里山の水辺を、人目を気にせず、思うがままにたゆたうことのできる絶好の機会かもしれません。