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禁煙と生命の跳躍

[2020.06.04]

時計の秒針をぼんやりと眺めていると、ときに刑而上学的思考に迷い込むことがあります。秒針の刻む一瞬を現在と仮定する場合、その現在を認識した時点で、それはすでに過去となっているのではないかなどといった具合です。
流れる時間をどう捉えるかに関して、現在は、過去や未来と同時には存在しえないという古典的な考え方があります。一方、現在は、過去のすべての時点が映し出された存在であり、それは、次の現在、つまり、未来へとつながっていくと考えると、過去は、現在において、決して消滅するわけではないとみることもできます。これが、哲学者ベルクソンが提唱した「純粋持続」という概念です。
たとえば、たばこをやめたいけれどやめられない方が、いまさら禁煙してももう遅いだろうと考えたとします。純粋持続でいえば、過去はいつまでも現在とともにあるので、喫煙により生じた身体の不具合がすぐにリセットされるわけではありません。しかし、過去から現在、そして未来へと進む過程で、遅きに失したと思われた禁煙でも、将来、予期し得ないようなよい変化をもたらし、新しい自分に生まれ変わることができるかもしれません。ベルクソンは、現在から未来へと向かう純粋持続の時間軸における、突然の変化を「生命の跳躍」と呼んでいます。

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