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キュビズムと医療

[2023.06.29]

スペインの画家パブロ・ピカソによる「ゲルニカ」は、空襲で無差別爆撃を受けた様が描かれた作品です。生活や命が理不尽に奪われることに対する、恐怖、怒り、悲しみ、祈りなどが、モノクロームに近い配色と、単純化された線描により、普遍的な叫びとして、戦争の続く現代を生きる私たちに響いてきます。

ピカソは、モチーフをあえて幾何学的に表現することで抽象化する手法を用いています。このような試みやその一派を、キュビズムといいます。複数の視点から得たイメージを、1枚の絵の中に集約し、芸術作品として仕上げることで、鑑賞者である私たちに無限の解釈を許容させてくれます。

最近、心臓の形状を評価することが、心疾患発症リスクの予測に役立つ可能性があるとする、米国での研究報告が発表されました。心臓がどれだけ丸いかという真球度を求めることで、特定の心臓病の起こりやすさがわかるとするものです。従来の、血液検査や心臓超音波検査で得られたデータ等に、真球度という新たな視点が加わることで、より患者さんに利することが期待できます。

できるだけ多くの視点からの医学的知見を標準化し、1人の人間に集約させ、よりよい健康状態に仕上げていく。その点において、医療の実践がキュビズムと似ているような気がするのは、私だけでしょうか。

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