ハインリッヒの法則と熱中症
1:29:300。さて、この数字は何を表しているでしょうか。労働災害の分野に詳しい方でしたら、すぐにお気づきになったかもしれません。これは、1件の重大事故発生の裏に、29件の小規模な事故と、300件の異常な事象(ヒヤリとしたりハッとしたりする危険な状態をいい、ヒヤリ・ハットとも表現されます)が隠されているというもので、ハインリッヒの法則といいます。
医療の分野でも、この法則に沿った考え方があてはまる場合があります。たとえば、熱中症です。毎年6月から9月にかけて、熱中症で救急搬送される人が一気に増加しますが、実際には、それよりはるかに多い人数の、軽症患者さんや予備軍の方が存在します。
ハインリッヒの法則で重要なのは、数字以上に、その考え方です。重大事故の発生を防ぐために、ヒヤリ・ハットの段階で、どれだけ適切に、情報収集し、また、状況を悪化させない対策を講じることができるかということが大切なのです。
熱中症には、気温だけでなく、湿度も大いに関係します。暑さに十分体が慣れていない梅雨時の湿った環境は、熱中症を引き起こす危険因子です。特に、高齢の方では、発汗のバランスが悪くなっていることもあり、本人の気づかぬままに重症化してしまうこともありえます。自らの熱中症を疑った際、自力で水分補給できない、または、水分補給しても症状が改善しない場合、医療機関を受診する目安と考えていいでしょう。