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AIと医療の未来

[2021.10.14]

患者さんの自覚症状や身体所見から、病気を診断し、治療する。医療用の人工知能(Artificial Intelligence; AI)が開発されたら、AIが、こうした医師の仕事にとって代わるのではないか。そんな声を聞くことがあります。

狭義のAIとは異なりますが、統計モデルを用いた医療機器は、現在の医療現場でも用いられています。たとえば、心電図の自動解析装置もそのひとつです。心電図の測定とほぼ同時に、その心電図が正常かどうか、どんな異常波形が検出されたかなどが表示されます。

しかし、実際には、その解析結果の信頼性に乏しいのが現状です。最近、健康診断での心電図で心室期外収縮という不整脈を指摘されたと、不安がって当院を受診された方がいらっしゃいました。しかし、その際の心電図記録を拝見すると、いわゆる正常波形で、不整脈の診断は、おそらく自動解析装置の誤表示によると推測されました。この例に限らず、日常診療で、同様の事例によく遭遇します。

問題なのは、実際の心電図を医師が確認せず、自動解析されたデータを、そのまま健康診断の結果として患者さんに渡している可能性があるということです。それは、患者さんに対し、正当な医療サービスを提供していないだけでなく、医療者が、自らの首を絞めている姿勢にほかなりません。

AIに、心電図データとその解析を学習させるのは、医師自身です。そして、AIが導き出した答えが、本当に正しいかどうかを判断するのも、また、それを患者さんに説明し、治療の必要な場合、そのモチベーションを保ちながら継続支援していけるのも、AIでなく、人間としての医師だからこそ担いうる役割だと考えます。AIの時代においてこそ、私たち医療者は、患者さんにいっそう寄り添いながら、ともに医療の未来を築いていける存在として、求められ続けたいと願います。

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