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ジャズと診療

[2024.04.25]

はじめて海外で研究発表したのは、米国・ニューオーリンズで開催された心臓病学会でした。ニューオーリンズといえば、すぐさまジャズが思い浮ぶように、フレンチクオーターのバーボンストリートを歩くと、建物内のあちらこちらから生演奏が聞こえてきます。こぢんまりとした老舗のプリザベーション・ホールの扉越しに中を覗き、まず驚いたのが、演者と観客との距離の近さでした。

それは、診察室での、患者さんと医師との距離感を思わせました。ちなみに、医療の世界では、クリニカルジャズという概念があります。これは、ジャズにおけるコードとそれに基づき即興でなされるアドリブとの関係を、医療における科学的根拠と臨床経験にたとえたものです。つまり、症例ごとに、教科書的な評価を基本とした上で、医療者ごとの知見や経験を交えて議論したり振り返ったりすることで、より深く各々の課題を解決していくやり方です。

診療において、私たちは、目の前の患者さんに対し、ときにつらい結果や見通しをお伝えしなければなりません。また、あえて厳しい生活指導を必要とする場面もあります。ただ、それが、患者さんにとって未来の笑顔につながるならば、ガイドライン等に沿った確かな知識や技術をもとに、ときに新聞記者時代や医師としての経験を踏まえながら、それぞれの患者さんに合った医療を提供し続けていきたいものです。

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