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芭蕉と行く春

[2024.04.04]

宮城と山形両県を結ぶ仙山線の山寺駅を降りると、宝珠山立石寺の参道へと続きます。根本中堂からさらに歩いていくと、俳人松尾芭蕉の像と、「閑さや岩にしみ入る蝉の声」との句碑が見えてきます。

京都の学生だったころ、藤子・F・不二雄の短編「山寺グラフィティ」(小学館)に触発され、青春18きっぷで訪ねたことがあります。日常が多忙であるほど、山寺でかいだ草木のかおりや空に開けた山間の絶景を、甘酸っぱい青春の記憶とともに思い出します。

芭蕉は、西行法師の500回忌にあわせて、門人の曾良を伴い、江戸から奥州を巡る旅に出ました。その紀行文が、「おくのほそ道」です。旅立ちの際、芭蕉は、次の句を詠んだとされます。「行く春や鳥啼魚の目は泪」。過ぎ去る春に、自身の思いを重ねたのでしょう。

そのとき、芭蕉は46歳でした。その歳にして、150日間ほどで約2,400kmの道のりを踏破したわけですから、はつらつとした健脚ぶりに驚きます。

別れと旅立ちの春、散る花びらに心を残しつつ、新たな目標に向かって歩きはじめるのにふさわしい季節です。ときには、芭蕉のように。蝉の声のごとく響く世事のよろこびやかなしみを、心の中にある大きな巌にスッとしみこませて。

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