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3次元と研究の思い出

[2020.08.27]

大学院生だったころ、心臓の血管内を評価する研究をしていました。心臓に張りついた動脈を、冠動脈といいます。冠動脈が狭窄したり、閉塞したりすると、狭心症や心筋梗塞といった病気になります。これに対し、必要に応じて、カテーテルという管を使って、病変部を風船で膨らませたり、病変部にステントという網目状の筒を留置したりして治療します。その治療前後や治療中に、光干渉断層法を用いた特殊な装置で、血管内の性状やステントの状態を記録し、収集したデータを解析するのです。

指導してくださったのは、医師としての恩師、岡村誉之先生です。岡村先生は、西欧に留学中、自ら考案された光干渉断層法を用いた3次元画像解析技術を、大学院生である私に惜しげもなく伝授してくださいました。患者さんの診察を終えた後、夜更けまで研究に没頭し、また、いつもの臨床に戻る。眠たい眼をこすりながらの毎日でしたが、岡村先生がいつも熱心に指導してくださり、それが、国内外での学会発表や論文作成といった結果につながっていくことが、なによりのよろこびでした。

最近、3次元プリンターが汎用化されつつあり、医療の現場でも注目を浴びていますが、岡村先生が光干渉断層法を用いた3次元画像解析を編み出されたのは、それよりも前のことです。3次元的視野を得ることで、放射線画像や心電図からはイメージしにくい、立体的あるいは空間的な内臓の仕組みを、容易に理解することができます。

こうした独創性の高い最新の研究に触れさせていただくことのできた大学院生時代が、岡村先生への感謝とともに、時折、懐かしく思い出されます。

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