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大森監督との思い出とヒポクラテスの誓い

[2024.02.29]

2022年11月に亡くなられた映画監督の大森一樹さんとお会いしたのは、新聞記者として阪神間の水問題を取材していたときのことでした。柔和な笑顔でご自宅に迎えてくださり、ティーカップを手に、生意気盛りの若手記者だった私のつたない取材を終始真摯に受けてくださったお姿を、いまも鮮明におぼえています。

その後も、年賀状のやりとりを通じての交流が続きました。あれほど多忙な方が、毎年必ず手書きの言葉を添えてくださることに、映画監督としてだけでなく、人としての偉大さを常々感じました。

大森監督の代表作のひとつに「ヒポクラテスたち」があります。医学生たちの日常を描いた青春映画で、医学部出身の大森監督だからこその感性が光る作品です。ちなみに、この映画には、同じく医学部出身である漫画家の手塚治虫さんも出演されています。

「医学の父」と評される古代ギリシャのヒポクラテスは、彼の名を冠した「ヒポクラテスの誓い」で有名です。この誓いには、金銭的報酬だけを目的とせず、人を選ばず、患者さんのための医療を施すことなど、医師としての倫理観が記されています。大森監督の分け隔てのない優しさや作風の幅広さ、そして情熱は、医学生時代に培われたのかもしれません。

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