鑑真と漢方
[2024.10.03]
学生だったころ、大阪から中国・上海へ船で旅したことがあります。鑑真号と名づけられた国際フェリーは、2泊3日の旅程で、瀬戸内海から東シナ海へと私たちを誘います。慣れない船酔いの疲れは、船上から眺める星空と同室で仲良くなった旅人たちとの会話がほぐしてくれました。最近、新鑑真号が就航予定というニュースを知り、懐かしく思い出しました。
運航する日中国際フェリー株式会社のホームページによると、鑑真号と言う名称は、唐の高僧である鑑真和上に由来します。鑑真は、多くの試練を乗り越え、10年以上かけて来日を果たしますが、その過程で失明したといわれています。鑑真が、定期便として安全に就航する鑑真号のことを知ったら、どんな思いを抱いたでしょうか。
鑑真は、奈良時代の日本に、仏教の戒律を広めただけでなく、漢方を持ち込んだことでも知られています。岡山大の研究グループによると、現在の体系化された日本の漢方薬処方は、鑑真がもたらした漢方に源流があることが、廃版となった中国の書籍を調べることなどで明らかになったそうです。
日本では、いわゆる西洋医学の薬剤と同様の保険診療で漢方薬を処方できるという特徴があります。漢方医療は、検査結果からは説明のつかない症状に対して有効な場合があり、当院でも患者さんの希望に応じて処方しています。