見えるものと見えないもの
[2019.05.18]
「見える」ためには、光が網膜に達し、網膜の視細胞がそれを感じ、光情報を脳に伝えることが必要です。この機能により、脳は、色彩や動き、形、奥行きなどを認識することができます。さらに、”visible spectrum”、つまり、可視域も、「見える」ということに関係します。たとえば、ミツバチやアゲハチョウは、ヒトと異なる可視域を有しているため、ヒトに見えないものも見えることがあるそうです。
臨床では、見えないものを見る能力がとても大切な場面が、たくさんあります。「胸が苦しい」「動悸がする」「息苦しい」といった患者さんの自覚症状は、言葉ですら表現しにくく、形をもたない苦しみです。そうした訴えから、そこに潜む原因を推理し、患者さんとともに解決していくことが、私たちの仕事です。たとえ、検査結果で明らかな異常所見がなかったとしても、そこには、何かしらの見えないきっかけが隠れているかもしれないのです。
見えない訴えと真摯に向き合うこと。それは、臨床の原点といえるかもしれません。