自転車とブルガダ症候群
先日、隣町のショッピングモールまでサイクリングしました。高校生のころ、お気に入りの古書店を訪ねに、友人とよく自転車で通っていた道でしたが、景色は当時と大きく異なり、新しい住宅や商業施設が目立ちました。ただ、風をきってペダルをこぐ心地よさは、30年以上経ったいまも、あのころと同じでした。
さて、自転車の腰かけ部分をサドルといいますが、心電図の世界でも、サドルという文字を含んだ用語があります。サドルバック型ST上昇という表現で、これは、ブルガダ症候群という遺伝性疾患に特徴的な心電図所見のひとつです。サドルバックとは、馬などの背の両側につける鞍袋を指し、弓なりにへこんだ形状が、ブルガダ症候群の心電図波形と似ていることから用いられるようになったようです。
ブルガダ症候群は、心室細動という危険な不整脈発作を起こすことのある病態で、失神や突然死の原因となることから、「ポックリ病」といわれることもあります。東洋人の男性に多く、サドルバック型やコーブド型といった典型的な心電図波形がみられます。意識を失ったことがあったり、血縁者に若くして原因不明で亡くなった人がいたりする場合には、適切な診断と管理が必要です。ただ、特に、サドルバック型ST上昇については、健康診断で偶然に指摘されることもあり、多くの場合、心室細動を起こすことなく経過をみていくことができるともいわれています。