抗菌薬と耐性菌
[2019.12.19]
世界初の抗生物質であるペニシリンが発見されたのは、1928年のことです。以降、細菌による感染症に対し、抗生物質などの抗菌薬が果たしてきた功績は、計り知れません。一方、薬剤耐性菌という言葉をご存じでしょうか。これは、抗菌薬の効かない細菌を指し、世界中で増殖を続けているとされます。
抗菌薬を使用すると、ターゲットとなる細菌を退治することが可能です。しかし、同時に、その細菌がいることで力を潜めていた細菌のうち、投与された抗菌薬の効かないタイプが活性化し、耐性菌として増殖してしまう場合があります。抗菌薬が多く処方されれば、その分だけ耐性菌を増やすリスクも増加します。厚生労働省の抗微生物薬適正使用の手引きにおいても、ウイルス(細菌とは異なります)感染がメーンの感冒や百日咳以外の急性気管支炎、軽症の急性副鼻腔炎、検査で特定の菌が検出されない急性咽頭炎などでは、原則として、抗菌薬を投与しないことが推奨されています。
抗菌薬を飲めば風邪が早く治るというのは、間違った考え方です。感染症に対して為す術のない、ペニシリン発見以前の世界に後戻りしないよう、当院は、適正な抗菌薬の使用を実践しています。