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忘れな草と忘れられた弁

[2023.10.12]

秋にまかれた種が春から夏にかけて青紫色の小さな花を咲かせるワスレナグザは、忘れな草とも表記されます。語源の一説が中世ドイツに伝わる悲しい恋の物語に由来すると聞くと、哀愁漂うこの季節にこそふさわしい花のような気もします。

さて、心臓の中には花弁のような扉がいくつかあり、血液の流れがスムーズにいくように調整する役割を担っています。そのうち、「忘れられた弁」と形容されるのが、右房と右室を隔てる三尖弁です。

左室-大動脈間の大動脈弁や左房-左室間の僧帽弁での血流異常に対する治療は、近年めざましい発展をとげてきたのに対し、三尖弁は置き去りにされてきた印象があります。理由として、三尖弁での血液の逆流症が、有効な治療法のない疾患として扱われてきたことなどが考えられます。一方、高度の三尖弁逆流の自然予後が極めて悪いこともよく知られています。

数年前より、欧米を中心として三尖弁逆流症に対するカテーテルを用いた低侵襲治療の試験が実施され、実臨床での期待が高まっています。もしかしたら、そう遠くない将来、国内でも忘れられた弁に対する注目度が一気に上昇してくるかもしれません。

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