心臓リハビリテーションとトータル・ヘルスプロモーション
私が心臓リハビリテーション指導士の資格を取得したころ、山口県内で同資格を有する医師はほとんどおらず、心臓リハビリテーションという概念もあまり知られていませんでした。医局内で心臓リハビリテーションの大切さをプレゼンテーションした際も、「そういうのは、都会の大病院がすることだろう」などと、一蹴されたのを覚えています。
現在、心臓リハビリテーションは、心臓病を持つ患者さんの治療方針を組み立てていく上で支柱をなし、国内外を問わず広く普及しています。適切な指導のもとでのエルゴメーターなどを用いた運動療法は、保険適応にもなっています。
一方、リハビリテーションのイメージから、運動療法とイコールで捉えられがちなのが現状です。しかし、実際には、日常生活動作指導、禁煙指導、栄養指導、服薬指導、精神的支援なども含まれ、いずれも重要になります。以前勤務していた病院では、理学療法士、作業療法士、看護師、管理栄養士、薬剤師らとともにチームをつくり、それぞれの立場から意見を出し合いながら、個々の患者さんにオーダーメイドな心臓リハビリテーション計画を作成していました。
このように、心臓リハビリテーションは、単に運動療法にとどまりません。その点において、トータル・ヘルスプロモーションの理念と共通しています。トータル・ヘルスプロモーションは、働く人の心と体の健康づくりに対し、厚生労働省が提唱したものです。心臓病のある人も、そうでない人も、健やかに歳を重ねてほしい。その思いから、当院では、心臓リハビリテーションやトータル・ヘルスプロモーションの考え方に沿った指導を実践しています。