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カルテと人生の物語

[2019.05.24]

研修医のころ、指導医のひとりから、研修医が指導医よりも患者さんのためにできることは、なるべくたくさんカルテを書くことと言われたことがあります。その言葉を、研修を終えて10年以上経った後も、後輩医師たちへの指導訓としてきましたし、私自身の、医師としての基本的な姿勢として、とても大切にしています。

いまは、電子カルテが主流で、カルテの記載や管理が便利になりました。紙ベースのカルテだったころには、特に重症担当患者さんの病状や方針について、毎日1人あたり4,5ページ分を、夜更けや、時には夜が明けるまで、カルテに記載していました。

カルテは、患者さんにとって人生の物語です。そこには、ただ病気に関する記載にとどまらず、行間に、それぞれの患者さんの生きざまや価値観がにじんでいるのです。人生の記録をしっかり書き残すという点においては、もしかしたら、新聞記者時代の経験を少し生かせているのかもしれません。

いまも、診察後、その日に来院されたすべての患者さんのカルテをもう一度読み直し、治療経過や今後の方針について再考し、あらためてカルテにまとめることを日課としています。

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