甲状腺と心不全
[2020.05.28]
体の中で、代謝にかかわるホルモンを分泌しているのが、甲状腺です。甲状腺は、いわゆる「のどぼとけ」のすぐ下あたりにある臓器で、甲状腺ホルモンの分泌に異常があると、代謝のバランスが崩れ、悪化により、さまざまな症状があらわれます。たとえば、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症では、動悸や倦怠感、体重減少などが起こりえます。逆に、甲状腺機能の低下した状態では、倦怠感やむくみなどを生じることがあります。
ここで、心臓の病気に詳しい方がおられましたら、あることにお気づきになったかもしれません。実は、甲状腺の機能異常による症状は、心不全の症状と、とてもよく似ているのです。実際の臨床でも、患者さんからお聞きする症状だけでは、甲状腺と心臓、どちらが原因なのか、判断に迷うことがあります。また、甲状腺機能異常と心不全を合併している場合もあり、たとえば、甲状腺機能亢進症による高拍出性心不全などがあげられます。なお、心不全の原因ともなりうる高血圧は、甲状腺機能の亢進と低下、いずれによっても起こりえます。
当院では、心不全を疑う患者さんや、心不全治療中の患者さんに対し、甲状腺疾患の有無についても適切に評価することをこころがけています。