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映画「八重子のハミング」とやさしさのメッセージ

[2020.04.14]

先日、下関市出身の映画監督で、「半落ち」や「チルソクの夏」などの作品で知られる佐々部清さんが、お亡くなりになったと報じられました。
普段、映画を観る機会の少ない私ですが、この訃報をしる数日前、ひょんなきっかけで、2017年に公開された佐々部監督の作品「八重子のハミング」を鑑賞しました。陽信孝さんによる同タイトルのノンフィクション書籍が原作で、認知症で徐々に記憶をなくしていく妻と、それを支える夫、家族や友人たちとのつながりが、決してきれい事だけではすまされないことも含め、穏やかな視点で描き出され、エンドロールが流れるころには、熱いものが込み上げてきました。ロケ地として、徳山の風景が度々出てくることも、より身近な作品に感じられた要因なのでしょう。
「怒りには限界があるけれど、やさしさには限界はない」。この映画の中で、最も心に響いた台詞です。認知症の妻に献身的な介護で長年寄り添った、主人公である夫が発したこの言葉の意味を、ほとんどの人は理解するでしょう。しかし、これを実践することは、並大抵のことではありません。
自分自身のことであっても、家族や友人のことであっても、加齢や病気とともに衰えゆく体調や心の変化に、私たちは、どのように向き合っているでしょうか。先のみえない闇の中に沈んでしまいそうなときこそ、この映画が私たちに残してくれたやさしさのメッセージを思い出したいものです。

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