冠動脈とコロナ
[2021.10.28]
心臓に血液を供給する血管を、冠動脈といい、閉塞や狭窄により、心筋梗塞や狭心症を発症します。英語では、coronary artery(コロナリー・アーテリー)といい、coronaryは、ギリシャ語で「王冠」を意味する、corona(コローナ)に由来するとされています。冠動脈が心臓に張りつく様は、まさに王者を象徴する冠のようです。
新型コロナウイルスのコロナも、語源は同じです。たしかに、顕微鏡写真でみる特徴的な突起を有する球形は、王冠を連想させます。
ところで、新型コロナウイルスに感染すると、心筋梗塞を起こしやすくなるのではないかと心配する声を耳にします。日本循環器学会によると、ウイルスのもたらす炎症作用により、冠動脈のプラーク(脂肪の沈着物)が破裂し、急性心筋梗塞などを引き起こす可能性が考えられているのだそうです。これを裏づける臨床データは、これから蓄積されていくのでしょうし、炎症を惹起する外因についても、新型コロナウイルスに限ったことではないでしょう。しかし、少なくとも、高血圧、脂質異常、糖尿病、喫煙、肥満といった、心筋梗塞発症の危険因子をもつ患者さんは、そうでない方と比べて、より徹底した感染予防が必要であることには、間違いなさそうです。