ちくわと血管の内側
朝晩の冷え込みを感じる季節になると、おでんが恋しくなります。出汁の効いたつゆに浮かぶ餅入り巾着やこんにゃく、大根、卵などを見ていると、それだけで、縮まった体があたたかくなり、緩んでいく気がします。
たくさんの具の中から好きな食材を選べるのも、おでんの魅力といえるでしょう。ちくわは、定番の具のひとつですが、職業柄でしょうか、ちくわを見ると、つい血管のイメージと重ねてしまいます。大学院生のころ、冠動脈ステント治療後の血管内腔を、特殊な装置を用いて評価し、集めたデータを解析するという研究に明け暮れていたこともあり、特に、ちくわの白くツルッとした内側の部分を、ジッと眺めてしまうのです。
血管は、全身にはり巡らされています。その内側の壁を構成する血管内皮細胞は、動脈硬化の形成や進展に深くかかわっていると考えられています。血管内皮細胞の機能は、高血圧や糖尿病、脂質異常、肥満といった生活習慣病などにより低下します。そして、血管内皮機能の低下した状態が続けば、心筋梗塞や脳梗塞の原因ともなりえます。また、血管内皮機能低下と更年期症候群との関連も指摘されています。
血管内皮機能の低下は、動脈硬化の初期段階で生じるといわれています。すなわち、血管内皮機能を改善させることは、動脈硬化の予防にもつながるといえるのです。
アツアツのちくわを頬張るとき、血管に思いを馳せて、ひごろの生活習慣を見つめ直してみるのもいいかもしれません。ちなみに、一般的なちくわ1本に含まれる塩分量は、約2gとされていますので、高血圧のある方にとっては、食べ過ぎに要注意です。