食中毒と心筋梗塞
[2024.12.12]
食中毒といえば、ジメッとした梅雨どきに起きやすいイメージですが、もちろんそれ以外の時期にも発生します。冬に多くなるのは、ノロウイルスによる食中毒です。この時期の食卓を彩る牡蛎(かき)は、このウイルスの代表的な感染源です。ただ、ノロウイルスは、十分な加熱処理により死滅します。そのため、焼き牡蛎や牡蛎フライは、食中毒の発生を抑制しうる調理法といえます。
ノロウイルスに限らず、食中毒になったときには、一般的に、腹痛や嘔吐、水様の下痢といった消化器症状が出現します。また、ノロウイルスでは、みぞおちの痛みを自覚することがあります。
循環器専門医の目から見ると、このみぞおちの痛み、つまり、心窩部痛や胃痛は、心筋梗塞の典型的な症状でもあります。勤務医だったころ、下痢と心窩部痛の訴えで消化器内科を受診された女性の心電図をとってみると、典型的な心筋梗塞の波形を示しており、緊急で心臓カテーテル治療を施行した経験があります。また、胃痛の訴えで他院を受診したが治らないとのことで当院を受診された男性が、実は心筋梗塞だったというケースもありました。
食中毒と心筋梗塞、どちらも命にかかわることがあるだけに、適切な診断と治療がとても大切です。