新しい心不全のガイドラインとBNP
今春、日本循環器学会による新しい心不全のガイドラインが、数年ぶりに発表されました。俯瞰すると、国内外での最新の知見が取り込まれ、大幅な改訂がなされた印象です。
改訂点のうち、まず注目したいのが、心不全診療における急性期と慢性期の区別をなくし、ガイドライン名自体が「急性・慢性心不全診療ガイドライン」から「心不全診療ガイドライン」へと変更されたことです。心不全ステージのどの段階においても、急性、慢性を問わず、一貫した循環管理が重要であることを再認識させられます。
また、心不全の定義自体も、日米欧の心不全学会が合同で策定した”Universal definition and classification of heart failure”に基づいて変更されました。その中で、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNPまたはNT-proBNP)高値であることが、定義としてはじめて明記されました。
当院では、以前より血液検査でBNP測定を実施しており、20分程度で結果が出ます。今回のガイドラインでは、35pg/ml以上を前心不全、100pg/ml以上を心不全の可能性が高いとするカットオフ値が示されています。
一方、BNPは、年齢や腎機能による影響を受けやすいので、絶対値だけで一概に評価できない場合もあります。心不全に対し、定期的な通院治療を受けておられる患者さんにとって大切なのは、前回の値と比べてどうかということだろうと考えます。そして、測定するタイミングを見逃さないことは、かかりつけ医の力量ともいえます。