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甘草と甘い罠

[2020.08.13]

テレビやラジオから、球音とともに「栄冠は君に輝く」が聞こえてくると、本格的な夏を迎えた実感がわいてきます。今年は新型コロナ禍の影響で、いつもとは違う夏の大会となりました。それでも、球児や彼らを支える人たちの、日焼けした顔に輝く澄んだ瞳やはつらつとした動きをみると、どんな困難をも乗り越えていける勇気がみなぎってくるような気がします。

さて、高校野球観戦中、突然脚がつって動けなくなった選手をみたことがあります。脚がつるという症状は、野球に限らず、激しい運動をしたときに、時々みられます。また、いわゆるこむら返りの訴えで当院を受診される高齢の方も、少なからずおられます。

漢方薬である芍薬甘草湯は、こうした症状に対し、よく処方されるお薬のひとつです。患者さんの中には、頻繁に内服されている方もいらっしゃいますが、その場合、副作用に要注意です。

芍薬甘草湯に含まれる甘草は、マメ科の植物が原料で、生薬どうしをつなぎ合わせる効果があるため、漢方薬の多くに配合されています。ただ、甘草を過量に摂取すると、血中のカリウムが低下してしまうことがあります。たとえば、低カリウム血症による循環器領域の副作用として、房室ブロックや期外収縮といった不整脈が出現することがあり、場合によっては、意識消失の原因となります。ほか、四肢の筋力低下や麻痺、筋肉痛、腸閉塞なども起こりえます。

芍薬甘草湯は、脚がつる症状に対し、速効性を期待でき、患者さんの満足度が高いお薬です。しかし、甘草の甘い罠にはまってしまわないよう、適切な頻度での内服をこころがけましょう。

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