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傘と心臓の穴

[2021.06.03]

今年は、いつもより早く梅雨入りしました。この時期になると、駆け出しの新聞記者だったころ、上司から、梅雨入りにふさわしい写真を撮って、記事にするように言われたことを思い出します。私が選んだのは、店先に並んだカラフルな傘。いまでは、コンビニエンスストアで手に入る透明のビニール傘が主流でしょうか。

さて、循環器疾患を診る医師となった私が、いま、傘と聞いてイメージするのは、心房中隔欠損症の治療に用いられる、アンプラッツアー閉鎖栓という金属の道具です。これが、まるで2本の傘を連ねたような形状をしているのです。

心房中隔欠損症は、心臓内を隔てる壁のうち、心房中隔と呼ばれる部分に穴のあいた病気で、先天性心疾患の中では、比較的高頻度にみられるのが特徴です。未治療で放置しておくと、心不全や不整脈を生じることがあり、適切な診断とフォローアップが必要です。

あいた穴が大きくなったり、その穴を通過する血流量が増加したりした場合、治療が必要になります。以前は、外科的治療がメーンでした。一方、最近では、限られた症例になりますが、2重構造のアンプラッツアー閉鎖栓であいた穴をはさみこむカテーテル治療が実施されるようになりました。この治療は、外科的手法と異なり、低侵襲で患者さんの身体的負担が少なく、一般に入院も短期間で済むのが特徴です。

アンプラッツアー閉鎖栓は、患者さんの命を守る大切な傘といえるでしょう。

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