麦わらと尿
[2021.08.12]
フランスのオルセー美術館は、印象派とされる画家たちの作品が多く収蔵されていることで有名です。大学院生だったころ、パリで開催された学会での発表の合間に、同美術館を訪れ、直接見る大作の数々に圧倒されたのを覚えています。
巨匠たちの中でも、ルノワールは、麦わら帽子をかぶった少女を描いた作品などで知られています。麦わら帽子は、田園の穏やかな風景を連想させる一方、夏の強い日差しを受けながら大地を駆ける少年や少女のイメージとも重なります。最近、汗だくになった額をハンカチで拭きながら、ふと、ルノワールの絵を思い出しました。
意外にも、医療の世界でも、麦わらという言葉が使われます。一般的に、健康な状態の尿は、黄色や淡黄色といわれますが、麦わら色と表現されることもあります。もちろん、尿色だけで病気を断定することはできませんが、診断をつける糸口になることはあります。
たとえば、赤い色をした血尿は、膀胱炎や尿路結石を疑う指標となりますし、茶色い尿は、脱水状態や肝臓の病気が原因で起こっている変化かもしれません。
新型コロナ禍にあって、美術館めぐりを楽しむ機会が激減しました。さしあたり、麦わら色の尿に自らの健康を確かめつつ、画集をめくって、麦わら帽子の少女を探してみるとしましょうか。