血栓予防と出血リスク
[2025.02.27]
循環器疾患をメーンに診療している当院では、血液をサラサラにするお薬を継続して処方するケースが多くあります。そのうち、心筋梗塞や狭心症の原因となる冠動脈疾患における抗血栓療法は、再発を含む虚血イベントを減らすことを目的に、原則としてカテーテル治療後の全例に実施されます。
勤務医時代、冠動脈のカテーテル治療後、旅行先にお薬を持って行くのを忘れて、重症の心筋梗塞を再発した患者さんがおられました。また、国民皆保険制度のない海外の国では、経済的な理由で抗血栓薬の内服をみずから中止し、再発してしまうケースもあります。
一方、最近では、抗血栓薬の長期内服による出血イベント合併のリスクも指摘されるようになりました。日本循環器学会のガイドラインでも、カテーテル治療後の冠動脈疾患患者における抗血栓療法について、2剤以上を併用する期間をできるだけ短くするといった傾向がみられます。
日本人の場合、特に、心不全、貧血、末梢血管疾患、慢性腎臓病、低体重およびフレイルのある方について、冠動脈のカテーテル治療を実施する際、出血リスクが高いことを考慮する必要があります。また、治療後も、血栓予防のメリットと出血リスクのデメリットを天秤にかけながら、患者さんごとに抗血栓薬を調整していかなければなりません。