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推理と診察

[2023.12.14]

先日、古本市で、久しぶりに故・西村京太郎氏の推理小説を手にしました。思えば、中学生のころ、いわゆるトラベルミステリーと呼ばれる彼の著作に夢中になり、全国津々浦々を旅した気分になったものです。今回読んだのは、「『雪国』殺人事件」というタイトルでした。新潟県の越後湯沢を舞台に繰り広げられる事件の絶妙なトリックと、旅情豊かな描写に引き込まれ、一気に読み終えました。

さて、診察という行為も、推理と似ています。「シャーロック・ホームズ」シリーズの著者として知られるコナン・ドイルが、作家として名声を得る前、医師として働いていたのをご存じですか。英国・エジンバラ大医学部で学んだドイルは、卒業後、ポーツマス郊外で診療所を開業します。しかし、訪れる患者さんは少なく、持て余した時間に副業として始めたのが執筆でした。そして、若きドイルに多大な影響を与えたのが、ベル麻痺などで有名な恩師、チャールズ・ベル博士といわれています。

ベル博士には、その鋭い観察眼を評するいくつかの逸話が残っています。たとえば、靴底に付着した赤土を見ただけで、その患者さんが来院前にどこにいたのかを言い当てたという話などが有名です。ドイルがベル博士から学んだ視覚的診察術は、ホームズ誕生に少なからず影響を与えたと考えてよいでしょう。

では、ホームズになった気分で、診察してみましょう。患者さんが診察室に入り、椅子に座ります。そのときの歩き方は、座り方は、服装は、髪型は、表情は・・・・・・いまある知識を総動員してじっくり観察することで、診断につながるヒントが浮かんできます。おや、なんだか、トラベルミステリーシリーズの主人公、十津川警部になった気もしてきました。

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