メニュー

川の流れと血栓

[2026.05.14]

先日、京都を訪ねた際、ひさしぶりに鴨川の河畔に降り立ちました。階段を降りて川岸に腰掛け、澄んだ青空の広がる初夏の陽光に包まれながら、浅瀬にのぞく石をなでるせせらぎをしばし眺めていると、青春時代を過ごしたあのころにタイムスリップしたかのような錯覚にのみこまれました。

京都市内の中心部を南北に流れる鴨川は、京阪電車の出町柳駅近くで、加茂川と高野川が合流して形成され、ちょうど合流するあたりに、通称「鴨川デルタ」と呼ばれる三角形の中州があります。そこでよく、仲間たちと集い、部活動の練習をしたり、語り合ったりしていました。時代とともに移ろう古都にあって、かわることなく私たちを見守ってくれた景色のひとつです。

さて、日々の循環器診療にあって、患者さんに対し、時々、川の流れのお話をすることがあります。不整脈の中でも、加齢とともに増加するといわれるのが、心房細動です。心房細動は、心拍のリズムが一定でないのを特徴とし、脳梗塞を発症するリスクが高いことで知られています。では、なぜ心拍リズムが不整だと、脳梗塞を発症しやすいのでしょうか。それを説明するとき、川の流れに例えています。

流れの速さが一定の場合と異なり、曲がりくねった川のようによどみがあれば、そこに土砂がたまりやすくなります。体内の血流も同じで、心臓が規則正しく動いていないと、土砂、すなわち、血栓を形成しやすくなります。特に、左心房という部屋のへこんだ部分をさす左心耳に血栓ができやすく、その血栓が剥がれて血流にのってしまえば、脳の比較的太い血管を一瞬で詰まらせてしまうのです。そのため、心房細動と診断されたら、原則として、血液をサラサラにして血栓の形成を予防するお薬を継続して内服することになります。

心臓の中にできてしまう血液の中州に対しては、早めの診断と対策が大切なのです。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME