メニュー

アライグマの眼とアミロイドーシス

[2025.06.12]

眼の周囲が紫に変色する症状を、アライグマの眼徴候といいます。眼窩周囲の皮下出血や紫斑を指し、頭蓋底骨折のサインとして知られていますが、実は、アミロイドーシスという一般には聞き慣れない疾患でもみられることがあります。

アミロイドーシスは、アミロイドという小さなタンパク質がさまざまな臓器に沈着し、機能障害を引き起こす病気の総称です。心臓、腎臓、消化管、脳、皮膚、神経などへの沈着が知られており、詳しい発症メカニズムの詳細は、いまだ不明です。

研修医のころ、心臓にアミロイドが沈着した心アミロイドーシスの患者さんを担当させていただき、症例報告としてまとめたことがあります。心臓超音波検査で、アミロイドの沈着を反映するとされる不均一で顆粒状の高輝度エコー所見がみられました。

当時、心アミロイドーシスの進行を遅らせる治療法がいくつか報告されていましたが、根治療法ではなく、診断時すでに重症化している場合、余命は6か月程度というのが一般的でした。それを患者さんにどのようにお伝えしたらいいか、苦悶し続けたのを覚えています。

いまでは、アミロイドの種類や診断時の病状にもよりますが、有効な新薬があります。心臓に限らず、アミロイドーシスを診断するきっかけは、アライグマの眼徴候以外にもさまざまです。特に、心アミロイドーシスについては、ふらつきや息切れ、動悸、むくみといった心不全や不整脈に伴う症状がきっかけで診断につながることもあります。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME